社長のひとり言2021年
第100回 『時の流れの真ん中で』
18歳の時にもらった手紙
恐らく最初で最後になると思う手紙を愛娘(次女)へ送ります。
高校卒業おめでとう!そして何より希望していた語学(ドイツ語)を学ぶ為の大学の入学も決まり安堵している事でしょう。今まで小学校、中学校、高校と親の敷いたレールに乗って過してきた学生生活に窮屈を覚え不満を言ってきた事もありましたね。
でも今回の大学は自分で決め自ら勝ち取った合格ですから胸を張り誇りを持って新たなスタートを迎えて下さい。
高校1年生の時、単身スイスに1年間留学し帰国した時から言っていた
「海外から客観的に日本の良い所や改善すべき所を見る事ができてとても貴重な体験が出来た」
「世界には日本では考えられない様な恵まれない過酷な環境で生活している子供たちが大勢いることも同時に知った」...等々。
あつく語っている姿を見れて一回り大きく成長して帰国したものだ...と感心したのをつい昨日の事の様に覚えています。
本音を言うと高校1年生(16才)でドイツ語圏のスイスに単身で1年間留学するというのは親としては相当不安で躊躇する事もありました。そんな親の心配もどこ吹く風で留学が決まると「さくっ」と飛行機に飛び乗りあっと言う間に行ってしまいましたね。向こう(スイス)に着いてからもほとんど連絡もないまま何だかんだで1年間、やり切りました。
今の父に同じ事が出来るかと言えば100%無理。
「若さ」と「熱意」って素晴らしいなぁと羨ましくも思えました。
そうやって少しずつ親元を離れていく事に少し寂しさを感じつつ、その反面頼もしさも感じる今日この頃。
これから4年間の大学生活を終えて社会に出ると学生の時には考えられなかった様な困難に直面する事もあると思います。
その時はどうか遠慮なく親を頼って下さい。
さて4年後...
社会人になる時のあなたに1つだけお願いがあります。
大学で勉強した語学がもし社会の役に立つレベルだと分かった時はその能力を自分の私利私欲の為に使うのではなく恵まれない人たちの為に使える大人になって下さい。
もし親孝行したい...と考えを持ってくれる事があるとしたならばその時はその分をどうか自分自身の為に使って下さい。
その気持ちを持ってくれる事だけで充分親孝行です。
人の為に仕事をしていれば必ずそれを見ている誰かがいます。
すると今度は自分が困った時にそれを見ていた人たちが助けてくれるはずです。逆に、自分の事だけを考えて仕事をしていると人は仲間になってくれません。どうか穏やかな人間関係を築いて下さい。
「人生は一度きりだからやり直しがきかない...」と言う人がいます。
しかし、それは違うと思います。
「間違ったなあ」とか「失敗したかも」と思ったならば、良くなかった所を謙虚に受けとめ何度でもやり直せるのが人生だと思います。ですから失敗を恐れず何事にもチャレンジして下さい。
だけれど、あなたが世界で見てきたという恵まれない過酷な環境下の子供たちは何か人生で失敗をしたからそうなったのではないですヨネ。
親の都合とか親がいなかったりで人生をやり直そうにもやり直す術(すべ)がないという現実があるのも事実です。
それを救えるのは「地位」や「名声」や「お金」ではありません。
それを救えるのは「教養」です。「教養」とは言い換えれば「知恵」です。あなたの身につけた「知恵」をどうか世の中の恵まれない人々の為に使って下さい。
文化が異なれば違う考え方をする人がいるのは当然です。
それを否定するのではなくその人の本質を共有して下さい。
人間の本質というのは親が子を子が親を想う優しい気持ち、純粋に人を愛する人間ならではの暖かい心の事です。
そんな人間になって下さい。
そんな人生を送って下さい。
そしてあなたが人生を振り返る時(最期の時)
自分の人生は「幸せだったなぁ」と思える様、悔いのない生き方をして下さい。
生まれてきてくれて「ありがとう」
一度きりの人生を楽しんで下さい。
第99回 『日曜日は天の川』
「天の川」って自分の居る場所が暗くないと見えないですよネ。
綺麗だろうなって分かってその存在を知っていてもなかなか見れない…
特に東京の都心などでは夜もネオンや街灯の光でまず見える事はありません。
最近、自分の生活や仕事でもそれが当てはまるのではないか…と思う事がありました。
大学を卒業して就職したのは大手ハウスメーカー。当時、定休日は火曜日と水曜日で、土曜日、日曜日、祝日は出勤でした。(当時はそれが当たり前でしたが、今思うと相当ブラックですよネ~)(汗)
7年間、その会社でお世話になりましたので、建築の仕事をするって事は、日曜日はお客様との打合せが常で出勤するのが当然というスタイルが私の生活に叩き込まれたのが根底にあったと思います。
タクト設計事務所を起業してからも、私(佐藤)は土曜日、日曜日は基本出勤です。(社員は、交代制で土曜日休み、日曜日休みを選べます)
このスタイルで何だかんだ20年。
そう言えば、就職したての頃、大学の同級生から土曜日の夜に飲み会に頻繁に誘われましたが、次の日(日曜日)が仕事なので断り続けた結果、だんだんとそのお誘いの連絡も少なくなり、ついには連絡が来なくなりました。
それでも仕事(建築)が楽しく充実していたので、日曜日や祝日に休みたい…と思った事はありません。寧ろ、火曜日や水曜日の平日が休みの方がどこに行っても空いていて、買い物なども楽でいいや~くらいにしか感じませんでした。
自分の子供の運動会のある日曜日ですら、契約など重要な仕事が入っている時は、仕事を優先して家の事は二の次だったかもしれません。
さて、(この年齢になって)先日、ふと急に日曜日に休みがとれる日があって、久しぶりに子供たちと「どこかに出掛けないか…」と声を掛けてみると、それぞれ、部活動や友達と一緒に買い物に行く…等々でそれが叶わない状況だと分かり、ひょっとしたら私は子供と楽しく過ごせる一番良い時期を犠牲にして生きてきたのではないか…と一瞬不安になりました。
ところが先日、弊社(タクト設計)のお客様(K様)からサプライズプレゼントが届き、この不安を見事に一掃して頂いた出来事がありました。
タクト設計事務所20周年のお祝いとして、何とロッテのコアラのマーチならぬ『タクトのマーチ』というオリジナルのお菓子を作って頂き、それをプレゼントして頂いたのです。
弊社で設計・施工をして頂いたお客様なら皆様お分かりかと思いますが、家の「仕様決め」はだいたい毎週の様に日曜日に行われます。しかも3~4時間の長時間に渡る事もあります。
長時間の打合せに対して、時には本当に申し分けないなぁと思う事もしばしば。
せっかくの休日をタクト設計事務所オフィスで過ごして頂く訳ですから…(汗)
しかし、このK様のお手紙には「タクトロスが続いています…」と嬉しいお言葉が綴られておりました。
建築という仕事に対して、約30年間、誠心誠意やってきて良かった…と思えた一瞬です。
お客様に喜んで頂く事で、私の日曜日は報われました。
毎週日曜日の打合せの賜物です。ありがとうございます。
一歩ひいて客観的に物事(仕事)を見た時、つまりお引き渡し後のお客様の暮らしを見た時に、それが光り輝くものであれば、私の日曜日は天の川の星一つ一つの「光」と同じ価値にして頂けます。(少し言い過ぎですネ)
お客様に喜んで頂く為には、やはり私(佐藤)は仕事一筋でいいんじゃないか…とお客様から教えて頂いた心温まるエピソードになりました。
K様、ありがとうございました。
そして全てのお客様に感謝です。
ではその気持ちをこの曲にのせて… どうぞ!